千早茜『さんかく』
どうして、どんな極小な骨も見逃さない観察眼が、自らの顔には発揮されないのだろう。それとも、わざと鼻毛を見せているのか。
笑
よく見ると、足の爪は赤く塗られていた。なんとなく高村さんにはそぐわない色に思え、俺はそっと目を逸らした。
異性として意識していなかった人が異性であると認識し、なんとなく不快になった描写? が好き。
昔は、この横顔を自分だけのものにしたいと思ったこともあった。でも、いまは違う。もう、このひとには、なにも期待してはいない。婚期を逃した私には焦りも失うものもない。
「私ね、諦めて一人になったの。仕事も、プライベートも(. . . )いろんなことに疲れて一人になったんだよね」
彼と一緒に暮らしてから、SNS をぐるぐるまわって寝られなくなる夜は減った。
高村さん、完璧な人に見えて人間味がありすぎる。
江國香織『ぬるい眠り』
ぬるい眠り(江國香織、新潮社、2007)
ぬるい眠り
主婦には主婦のオーラがただよっている。ぬかみそくさいとか、生活っぽいとか、そういうんじゃなく、もっと艶っぽい、もっとなまめかしい何か。目の前の人でいえば、ポニーテイルの首すじだとか、無造作にサンダルをつっかけた足元だとか。
なんかわかる気がします。
災難の顛末
台所にいくと、私は黙々とサンドイッチを作った。胚芽入りの食パンにバターとマスタードをぬりつけ、肉屋さんで薄く切ってもらったハムを五、六枚、一枚ごとにサラダ菜を入れてはさみこむ。
とろとろ
私がどういう女なのか、説明するのは簡単だ。小学生のときは図書委員で、短い髪をしていた。中学生のとき、肺炎で五日間入院した。高校生のとき、はじめてコンサートというものに行った。KISS の初来日コンサートで、(. . . )
こういう自己紹介いいな。
アニー・エルノー『嫉妬/事件』
嫉妬/事件(アニー・エルノー、堀茂樹・菊地よしみ訳、早川書房、2022)
嫉妬(L'Occupation)
その瞬間、そのもうひとりの女性の存在が私の中に侵入した。それからというもの、私は彼女をとおしてしか、ものを思うことができなくなってしまった。
同時に、彼女がそこにいるという途切れることのないその状態こそが、私がそれまで以上に張りをもって生きることになる要因だったともいえる。彼女のおかげで、私は熱に浮かされたかのような活動状態に常時保たれた。
なんとしてでも彼女の姓名を、年齢を、職業を、知る必要があった。
私がそう信じたように私が彼にとって唯一の存在だったからではなく、ひとりの熟年の女であり、(. . . )私は自分がひとつの規格のシリーズに属し、その限りにおいて取り替えのきく存在であることを確認させられたのだった。
彼女はといえば、六ヶ月間、日々お化粧をしたり、講義の授業にいそしんだりしていて、自分が他の場所でも、つまり別の女の頭と体の中でも生きているなどとは思いもよらずにいたことだろう。
事件(L'Événement)
中絶は悪だから禁じられているのか、禁じられているから悪なのか、決定することはできないのだ。世間の人は法律に従って判断するのであって、法律を判断するのではない。
張愛玲『傾城の恋/封鎖』
傾城の恋/封鎖(張愛玲、藤井省三訳、光文社、2018)
さすがは上海人
誰もが上海人は悪だと言うが、悪でも程合いをわきまえている。上海人はお世辞が上手、権力には迎合する、火事場どろぼうもやりかねないが、彼らには処世の芸術があり、演じるに演じるにやり過ぎることはない。
傾城の恋
白公館にはこのような神仙が住む場所があり、ここでぼんやり一日を過ごすと、世間では千年が過ぎているのだ。
「神仙が住む場所」という表現いいな。
子供が次々と生み落とされ、新しかった輝く瞳、新しかった赤い唇、新しかった知恵、それが年々磨滅して、瞳は鈍くなり、人も鈍くなると、次の世代が生み落とされるのだ。
彼女のような華奢な身体は最も老いを隠すのだーー永遠に細い腰に、子供を思わせる蕾のような乳房。
女性とは、どんなに素敵でも、異性の愛を得られなくては、同性の敬意も得られぬものなのだ。女性にはそんな卑しさがあるのだ。
学生時代を思い出す言葉。
彼らは星々が月に群がるように、ひとりの女性を囲んでいた。
きれいな表現。
封鎖
彼女はただ彼の命の一部分が欲しかった、誰も見向きもしない一部分が。
金枝、金蝉という姉妹の名前がかわいい。
蘇雷珈、艾芙林、炎桜という名前も。
あとがきのおもしろかった箇所。
兄弟が古書の相続を裁判で争うというのは、いかにも伝統中国文人の家で庄司そうなことであり、宋版ともなれば希少価値の高い研究資料であるだけでなく、芸術的骨董価値も高く、物によっては国宝ともなるのである。
中国大陸の近代知識人は先端意識と中心意識に凝り固まっており、「香港のような周縁地区に興味を寄せる」ことはなく、日本占領下の上海で香港の物語を書いた張愛玲も異国情趣の文学であり...
斉木香津『凍花』
斉木香津『凍花』双葉社、2010
「好意を寄せられると、すぐにその人のことを好きになってしまう。たとえ自分の理想にまったく合わなくても、自分に気があると意識したとたん、それが恋愛感情になってしまう。そういう人です」
いますよね。
同じ二十代でも、二十一歳と二十七歳では違うものだなと思った。
それでも、好きな人のことはもっと知りたいと思うのは、なぜかな。知って傷つくこともあるだろうけど、その先へ進めば、もっと大事ななにかが待っているはずだって信じられるからかもしれない。
たぶん、いやな思い出とかも、切り捨てられずに引きずったまま、それでも進んでいくんだよ。(. . . )自分を許せる日なんて来ないよね。だったら、許せない者どうしで、なんとかやっていくしかないんじゃないかな。
姉妹ものはグサグサ刺さる。
市川沙央『ハンチバック』
ハンチバック(市川沙央、文藝春秋、2023)
障害を持つ子のために親が頑張って財産を残し、子が係累なく死んで全て国庫行きになるパターンはよく聞く。生産性のない障害者に社会保障を食われることが気に入らない人々もそれを知れば多少なりと溜飲を下げてくれるのではないか?
アメリカの大学では ADA に基づき、電子教科書が普及済みどころか、箱から出して視覚障害者がすぐ使える仕様の端末でなければ配布物として採用されない。日本では社会に障害者はいないことになっているのでそんなアグレッシブな配慮はない。
こちらは紙の本を1冊読むたび少しずつ背骨が潰れていく気がするというのに、紙の匂いが好き、とかページをめくる感覚が好き、などと宣い電子書籍を貶める健常者は呑気でいい。
J. K. Rowling "Harry Potter and the Philosopher's Stone"
J. K. Rowling. Harry Potter and the Philosopher's Stone. Bloomsbury Publishing: UK, 1997
おいしそう
roasted beef, roast chicken, pork chops and lamb chops, sausages, bacon and steak, boiled potatoes,
Block of ice-cream in every flavour you could think of, apple pies, treacle tarts, chocolate éclairs
A hundred fat, roast turkeys, mountains of roast and boiled potatoes, platters of fat chipolatas, tureens
フレッドとジョージおもしろい。
But we're not stupid -- we know we're called Gred and Forge.