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甘糟りり子『産む、産まない、産めない』

産む、産まない、産めない甘糟りり子講談社2017

 

自由でいたいなら、同じ分だけ孤独を引き受けなければならない。

 

百合香のプライベートに強い興味があったわけではないが、儀礼的にプロポーズの言葉をたずね、嫌味にならない程度にうらやましいふりをした。

わかる。

 

途方もない性欲は、動物としての残り時間はあとわずかだと、突きつけられている証しのような気がした。

 

「もう、すっきりあきらめちゃいたいって気持ちもないことはないんです。ただ、そのきっかけがなくて……。私の身体にも主人の身体にも、決定的な原因があるわけでもないし。自分を納得させようにも、理由がなくって」

わかる。

 

ちょうど二ヶ月後の十一日は早百合の誕生日だ。三十二歳になる、同じ数字の日にちに生まれたという事実に、運命を感じてしまった自分は単純過ぎるだろうか。

 

妊娠したら産めばいいし、機会がなかったとしても後悔する必要もない。ないものばかりを捜す毎日はつまらないし、手にしたらきっと他のものが欲しくなる。

この言葉に出会えただけでも読んで良かったかな。

 

望んでいなかった桜子がほとんど偶然のように妊娠して、あんなにエネルギーも時間も金も使った自分にどうしてできなかったのだろうか。

 

ある日突然っていつ? 私は、そのある日をどれぐらい待ち続けたと思ってるの。これだけやって来ないんだから、そんな日は、永遠に来ないのよ。

 

女の人は、結局のところ、産むか産まないか、それとも産めないかの三つに当てはまるしかないのだ、と。

 

感想

  • 重美の人生が残酷すぎてつらい。
  • 私が知ってる体外受精の手順と違って不思議。2008年から2021年の間に技術が進化したのか?
  • 桜子がなぜ岩瀬に妊娠を伝えないのか理解できない。岩瀬の結婚をぶち壊してほしいと思ってしまう、、、笑
  • 小説なんかに出てくる夫は、不妊治療に非協力的だったり、料理にケチつけたり、悪い夫ばかり。良い夫がいたら全てうまく行くと思われてるんだろうか。まあ、悪い夫の方が小説書きやすいんだろうな。
  • 2017年の本なのに、iPod とかメールとか出てくるので不思議に思っていたら、連載から本になるまで9年かかったそう。現代はテクノロジーの発展が早くて、すぐに時代遅れになっちゃうね。