鴨長明『方丈記』
たかきいやしき人のすまひは、代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。
よのつねにおどろくほどの地震、二三十度ふらぬ日はなし。十日廿日過ぎにしかば、やうやうまどほになりて、或は四五度、二三度、もしは一日まぜ、二三日に一度など、大かたそのなごり、三月ばかりや侍りけむ。
昔から地震たくさんあったんだな。
ひとり身なるものは人にかろしめられ
秋は日ぐらしの聲耳に充てり。うつせみの世をかなしむかと聞ゆ。
すなはちこの山もりが居る所なり。かしこに小童あり、時々來りてあひとぶらふ。もしつれづれなる時は、これを友としてあそびありく。かれは十六歳、われは六十、その齢ことの外なれど、心を慰むることはこれおなじ。