boupopon

なんでもメモする場所

千早茜『さんかく』

千早茜『さんかく』祥伝社、2019 どうして、どんな極小な骨も見逃さない観察眼が、自らの顔には発揮されないのだろう。それとも、わざと鼻毛を見せているのか。 笑 よく見ると、足の爪は赤く塗られていた。なんとなく高村さんにはそぐわない色に思え、俺はそ…

江國香織『ぬるい眠り』

ぬるい眠り(江國香織、新潮社、2007) ぬるい眠り 主婦には主婦のオーラがただよっている。ぬかみそくさいとか、生活っぽいとか、そういうんじゃなく、もっと艶っぽい、もっとなまめかしい何か。目の前の人でいえば、ポニーテイルの首すじだとか、無造作に…

アニー・エルノー『嫉妬/事件』

嫉妬/事件(アニー・エルノー、堀茂樹・菊地よしみ訳、早川書房、2022) 嫉妬(L'Occupation) その瞬間、そのもうひとりの女性の存在が私の中に侵入した。それからというもの、私は彼女をとおしてしか、ものを思うことができなくなってしまった。 同時に、…

張愛玲『傾城の恋/封鎖』

傾城の恋/封鎖(張愛玲、藤井省三訳、光文社、2018) さすがは上海人 誰もが上海人は悪だと言うが、悪でも程合いをわきまえている。上海人はお世辞が上手、権力には迎合する、火事場どろぼうもやりかねないが、彼らには処世の芸術があり、演じるに演じるに…

斉木香津『凍花』

斉木香津『凍花』双葉社、2010 「好意を寄せられると、すぐにその人のことを好きになってしまう。たとえ自分の理想にまったく合わなくても、自分に気があると意識したとたん、それが恋愛感情になってしまう。そういう人です」 いますよね。 同じ二十代でも、…

市川沙央『ハンチバック』

ハンチバック(市川沙央、文藝春秋、2023) 障害を持つ子のために親が頑張って財産を残し、子が係累なく死んで全て国庫行きになるパターンはよく聞く。生産性のない障害者に社会保障を食われることが気に入らない人々もそれを知れば多少なりと溜飲を下げてく…

J. K. Rowling "Harry Potter and the Philosopher's Stone"

J. K. Rowling. Harry Potter and the Philosopher's Stone. Bloomsbury Publishing: UK, 1997 おいしそう roasted beef, roast chicken, pork chops and lamb chops, sausages, bacon and steak, boiled potatoes, Block of ice-cream in every flavour you…

温又柔『祝宴』

祝宴(温又柔、新潮社、2022) 一方で、長女に同性の恋人がいるという事実を受けとめきれずにいる自分を、妻や次女に知られたくないとも感じている。どうしてなのか、それが、ちょっとした恥のようにも思えるのだ。 それが現代の両親の感覚なのかなぁ。 --…

イ・スラ『日刊イ・スラ 私たちのあいだの話』

日刊イ・スラ 私たちのあいだの話(イ・スラ、原田里美/宮里綾羽訳、朝日出版社、2021) 今まで「唯一無二」の「唯」は「ある」という意味の「有」だと思っていたが、 漢字は日常的に使っているのかな? 「うん、でも小学生のとき、なんとなくルフィとピカ…

井戸川射子『この世の喜びよ』

この世の喜びよ(井戸川射子、講談社、2022) このままだと娘たちは、私は初めての子どもだったから臆病に、神経質に育てられてしまった、次女だから、全ての初めてに感動してもらえなかった、と言い続けるに違いない、そんなのはただの順番だけなのに。 私…

小倉紀蔵『韓くに文化ノオト  美しきことばと暮らしを知る』

韓くに文化ノオト 美しきことばと暮らしを知る(小倉紀蔵、筑摩書房、2023) 動物の「くま」。韓くにでは「コム」といいます。「わだつみ」の「わだ」。「海」という意味ですが、韓くにでは「パダ」といいます。 儒教を学ぶ学生たちには、四書を誦じることが…

オルナ・ドーナト『母親になって後悔してる』

母親になって後悔してる(オルナ・ドーナト、鹿田昌美訳、新潮社、2022) 孤独や退屈を乗り越えたいという願いから、または人生にもっと重要性と意味を与えたくて、母になろうとする女性もいるだろう。(. . . )想像であれ現実であれ、女性の選択肢が限られ…

洪愛珠『オールド台湾食卓記  祖母、母、私の行きつけの店』

オールド台湾食卓記 祖母、母、私の行きつけの店(洪愛珠、新井一二三訳、筑摩書房、2022. Hung Ai Chu. 老派少女購物路線 / A Taipei Girl’s Retro Shopping List. 2021) 蛋酥花生 (. . . )子ども時代の私と弟は、毎日その四角いテーブルで、朝ごはんと…

近藤弥生子『台湾はおばちゃんで回ってる?!』

台湾はおばちゃんで回ってる?!(近藤弥生子、大和書房、2022) https://amzn.asia/d/091zw6F 最近、台湾が気になる。 台湾の朝食文化 定番の豆乳と蛋餅(ネギを加えたクレープ状の生地に卵など好きな具材を挟み、お好みでソースをつけていただく) 飯糰(…

クォン・ナミ『ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活』

ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活(クォン・ナミ、藤田麗子訳、平凡社、2023. Kwon Nam-hee. 흔자여서 좋은 직업. 2021) ひとりだから楽しい仕事: 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活 | クォン・ナミ, 藤田…

チェ・ジウン『ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ』

ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ(チェ・ジウン、オ・ヨンア訳、晶文社、2022) https://amzn.asia/d/4iQjEbc 結婚が出産と同義語とみなされ、子どものいない結婚生活は不完全なものと認識され、子どもを望んでいな…

カワグチマサミ『子育てしながらフリーランス』

子育てしながらフリーランス(カワグチマサミ、左右社、2021) とても参考になる本でした! また読み返そう〜。 ワークやること! 不思議なことに、いろんなイラストレーターの模写や分析を繰り返すうちに、自然といいとこ取りをしつつ、自分のオリジナルタ…

ミュリエル・バルベリ『京都に咲く一輪の薔薇』

ミュリエル・バルベリ『京都に咲く一輪の薔薇』永田千奈訳、早川書房、2022 理想化されすぎた京都というかんじがする。 サヨコの英語が日本人らしくない。 "Today very busy." "Paul san in Tokyo today." とか、カタコトなのを表したいのだと思うけど、be …

村田沙耶香『コンビニ人間』

村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋、2016 自分が働いているのに、その職業を差別している人も、ちらほらいる。 何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好…

桜林直子『世界は夢組と叶え組でできている』

世界は夢組と叶え組でできている(桜林直子、ダイヤモンド社、2020) そうやって「子供がどうしたいのか言う」のと「親が関心をもって見る」をくり返していたら、結果的に「欲を言語化する」習慣になっていた。「こうしたい」という欲にフタをしないですんだ…

宋欣穎『いつもひとりだった、京都での日々』

いつもひとりだった、京都での日々(宋欣穎、光吉さくら訳、早川書房、2019. Hsin-Yin Sung. 京都 寂寞 / Alone in Kyoto. Taipei, Taiwan; 2015) 一か所に長いこと住んでたら、闘志いうんを失ってしまう。若い頃の勇敢さとか夢を忘れてしまうねんかぁ。 で…

山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』

選んだ孤独はよい孤独(山内マリコ、河出書房、2018) 角岡さんは自分を重要人物だと思わせる存在感を出すのが上手いだけで、全然仕事してなかった。まあ、そういう男性社員って多い。彼らはなんの悪気もなく、まるで自分の権利みたいに女性社員に雑務を押し…

ミシェル・ザウナー『Hマートで泣きながら』

Hマートで泣きながら(Michelle Zauner, 雨海弘美訳、集英社、2022) わたしが顔をしかめたりにこにこしすぎたりすればおでこを指でこすり、「しわになるんでしょ」と叱った。 Re Jane にも同じ動作があった。 生まれながらにしてハーブやリバーといった名前…

アザール・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』

アザール・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』市川恵里訳、河出書房、2021 男尊女卑の凄まじさに驚く。 革命後、結婚可能年齢が十八歳から九歳に下がったことを、姦通と売春に対する刑罰として石打ち刑が復活したことを、屈辱と思っているだろうか。 …

ミア・カンキマキ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

ミア・カンキマキ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』末延弘子訳、草思社、2021 平安時代の宮廷世界は美に捧げられた宇宙で、それらを支配しているのは歌であり、書であり、音楽であり、恋愛だった。これは、世界中のどこにもなかった文化だ。 ど…

山本文緒『そして私は一人になった』

山本文緒『そして私は一人になった』KADOKAWA、1997 泣いていても夜空に消えてしまった原稿は帰ってこない。 異常なぐらい私は日記をつけるのが好きなようだ。 前に「小説現代」に掲載された「プラナリア」という短編の扉絵があまりに素敵で気に入って、「も…

江國香織『落下する夕方』

落下する夕方(江國香織、KADOKAWA、1996) 2杯目の紅茶をつぎ、ミルクを入れてかきまわす。小さなスプーンは、カップに触れるといかにも喫茶店然とした、空々しく、女々しい音を出す。 「コーヒー、お砂糖はなしでミルクだけたくさん入れてね」 私の「でも…

宮本佳実『可愛いままで年収1000万円』

宮本佳実『可愛いままで年収1000万円』WAVE 出版、2015 自分の「好き」の基準がわからなくなったら、憧れの人のセンスを少しだけ取り入れてみるのも、一つの手段だと思います。 あらかじめ自分が「こうだったらいいな」という1日をつくっておくのです。 夢を…

山本文緒『プラナリア』

山本文緒『プラナリア』文藝春秋、2000 その週末、豹介が自分の母親の誕生日(!)だからと実家に帰って行ったので、私は久しぶりに女友達と街に出た。 こういう彼氏の話、友達からたまに聞く。 憎んでいるということは、愛してもいるということだ。私はひど…

山内マリコ『かわいい結婚』

鏡の前に立ち、なんて冴えない格好なんだろうとひかりは思った。嫌だなぁ、まるで主婦みたいじゃないか。 マタニティウェアを着たときに同じことを思った。 しかし慣れた暮らしをつづけるのはなにより安心で安全だ。その安心感が少しずつあや子から覇気を吸…