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アザール・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』

アザール・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』市川恵里訳、河出書房、2021

 

男尊女卑の凄まじさに驚く。

革命後、結婚可能年齢が十八歳から九歳に下がったことを、姦通と売春に対する刑罰として石打ち刑が復活したことを、屈辱と思っているだろうか。

 

昼休みに三人の女子学生がキャンパスでりんごを食べていたところ、守衛から叱責された。かじり方がなまめかしすぎるというのだ!

 

彼らは「他人の妻や母」への配慮から、ともあれ許可をもとめた。

 

ところがナボコフの描いたはすっぱな小娘をそれだけ非難していながら、その男(教授)は新しい妻を探す際、年齢二十三歳以下というのを第一条件とした。

 

「何しろ人間関係はひとりではつくれないんだから、人口の半分を見えなくしたら、後の半分も苦しむことになる」

 

「(. . . )鶏とセックスした男はあとでその鶏を食べていいかどうか考えなければならないんですって。われらの指導者の答えはこうよ。食べてはいけない。当人もその肉親も隣人もその鶏の肉を食べてはいけない。だが二軒先の家の者なら食べてもいい」

 

女の声は髪の毛同様、性欲を刺激するから隠しておくべきだというのである。

 

友だちを学校から追放したんですよ。スカーフの下にかすかに見える彼女の白い肌が欲情を刺激すると言って。

 

ひとり女の子がいてーー彼女の罪は、驚くほどの美人だってことだけでした。

 

ムスリムの男性は、財産に関係なく、九歳の処女妻を必要としているはずだというのは、だれもが認める真実である」

高慢と偏見』のパロディw

 

この制度(イラン独特のイスラームの制度)では、男性は正式な妻を四人まで、一時的な妻を好きなだけ持つことができる。この制度の裏にあるのは、妻を利用できないとき、あるいは妻が夫の欲求を満たせないときでも、男性は自分の欲求を満たす必要があるという論理である。

 

マニキュアも化粧と同じく処罰に値する犯罪であり、鞭打ち、罰金、最大で一年の禁固刑に処せられた。

 

イスラーム共和国に生きるのは、虫唾が走るほどいやな男とセックスするようなものよ。

 

ムスリムが経営するレストランはすべて入り口にこう標示しなければならなかった。非ムスリムは汚れていると考え、同じ皿からは食べない良きムスリムに、前もって警告するためである。

 

「好奇心はもっとも純粋なかたちの不服従である」(ナボコフ

 

イランを出るという決断はある日ふと訪れたーー少なくともそんなふうに見えた。このような決断は、いかに重大なものであろうと、周到な計画にもとづくことはめったにない。破綻した結婚のように、長年の恨みと怒りが突如爆発して致命的な決断に至るのだ。

 

アイスクリームが食べたくなる。カフェのシーンがあると、よくアイスを食べているから。それからシュークリーム。

 

私たちはそれぞれにごちそうをつくったーー仔羊肉とライス、ポテトサラダ、肉やライスを野菜に詰めたドルメ、サフランライス、大きな円いケーキ。

 

どんな料理か想像できないけどおいしそう。

 

その日、私たちの食欲には際限がなく、ラーレはカスタードプディングを注文し、私はバニラとコーヒーのアイスクリームとトルココーヒーを頼み、クルミもつけてもらった。

 

白く曇った窓、湯気のたつコーヒー、ぱちぱちと燃える火、心なごむシュークリーム、厚手のウールのセーター、煙とコーヒーとオレンジの混じりあった匂い。

 

私はカプチーノ、彼はエスプレッソ、それからこのカフェの名物のミルフィーユを二人分頼んだ。

 

それから、トルココーヒーを飲み終えた後の澱で占いをするのって本当だったんだ。昔英語の教科書で読んだことがある。