横田佳昌『あなたは体外受精でなくても、妊娠できるのでは?』
横田佳昌『あなたは体外受精でなくても、妊娠できるのでは?』文芸社、2018
原因不明不妊だったら体外受精を続けないといけないと思っていたので、読んでみてよかった。以下はそのメモです。
当院では卵管が正常で精子も正常なのに妊娠しない、いわゆる原因不明不妊の患者さんの60%が一般不妊治療で妊娠できているからです。
ARTは、治療1回の妊娠率が期待するほど高くありません。20代でも40%台、30代後半で25%程度、40歳で10%前後、45歳で5%以下とも言われます。全世代の総計では、よほど優秀な病院でも妊娠率30%前後がふつうです。
体外受精を10回以上して妊娠に至らなかったという方は多くいますが、そういう患者さんが一般不妊治療にステップダウンして妊娠出産されるケースは、実はけっこうたくさんあります。
日本産科婦人科学会が発表しているARTのガイドラインでは、このような適応原則が示されています。
体外受精の適応は
・この治療をしないと妊娠の可能性がないか、きわめて低いと判断される場合
・顕微受精の適応は男性不妊や受精障害などがあり、これ以外の治療では妊娠の可能性がないか、きわめて低いと判断される夫婦が対象
ARTが行われるのは以下の場合。
・両側卵管閉鎖
・卵管采癒着が強く卵子の吸引が困難な場合
・子宮内膜症で薬物療法、手術療法をしたにもかかわらず2年以上妊娠しない
・精子無力症
・人工授精を5〜6回以上実施しても妊娠しない
私たちどれも一致しないんだよなあ。
年齢によって単純に区別はできませんが、当院ではひとつの目安として、38歳未満の方はタイミング指導を3〜6ヶ月行い、妊娠に至らなかったら子宮鏡検査をすすめます。そしてさらに6ヶ月〜1年間は卵胞刺激を行って卵胞を育てる「hMG療法」に「人工授精」を併用して治療を進めます。(. . . )38歳以上の方や、他院ですでに6ヶ月以上治療されてきた方は、タイミング指導を行わずhMG療法と人工授精の併用を第1選択とし、それを3〜6周期行っても妊娠しない場合はARTへステップアップします。
卵管も精液所見も正常の原因不明不妊の場合でも、やはり一般不妊治療群が良好でした。一般不妊治療群の妊娠率は59.7%と、ほぼ60%。ARTでは48.1%です。したがって、原因不明不妊であればすぐに体外受精へとは限らないことがおわかりいただけたと思います。(. . . )では一般不妊治療とARTではどちらが早く妊娠できるのでしょうか? データからも一般不妊治療のほうが早く妊娠に到達していることがわかります。
ARTに進んでも、そればかりしなければいけないということはありません。体外受精を10回以上受けてもよい結果がでなかった患者さんが、一般不妊治療にステップダウンして妊娠したということはめずらしくないのです。
体外受精を行っている患者さんも、そればかり行うことはなく、治療上の柔軟性があってもよいはずです。一般不妊治療とARTを混合して行った患者さんの臨床成績は良好です。
中国4千年の歴史があると言われますが、不妊症の治療に効果があるという科学的根拠が明らかな漢方薬は、実はほとんどないのです。ちなみに、「冷えが不妊症を招く」「冷えを解消すれば妊娠できる」といった風説がありますが、これも根拠が不明です。
だよね〜。もうやめたけどだいぶ漢方に課金しました。
目安としては、毎日コーヒー3杯以上飲むと、妊娠率が下がります。
(. . . )なお、オスのマウスで実験しても同様に結果が悪く、精子に対してもカフェインの悪影響が認められました。近年増加している男性不妊の原因に、カフェインの過剰摂取の影響があることは十分に考えられます。
#メモ
・40歳以上となると、体外受精と人工授精(一般不妊治療)を交互に行っていくケースのほうが一般的。
・月経が順調だからといって、毎月必ず排卵しているとは限らない。
・排卵日の2日前から排卵後1日までが、タイミングをとるのに適している。
・その日病院で計測した卵胞の大きさ、注射、投薬日、人工授精など含めて、基礎体温表に記録しておくことをおすすめしているそう。
・加齢によって精子が劣化する、その一因が活性酸素と言われているそう。それを防ぐには、ビタミンE、ビタミンCを摂るのが良いという説があるそう。
・妊娠前から葉酸をとること。
・メラトニンという睡眠導入剤にも強い抗酸化作用があり、卵子の質をよくする効果が見込めるそう。
#どうでもいい感想
・ネズミって1回の交尾でほぼ100%妊娠するらしい、すごい…。