温又柔『祝宴』
祝宴(温又柔、新潮社、2022)
一方で、長女に同性の恋人がいるという事実を受けとめきれずにいる自分を、妻や次女に知られたくないとも感じている。どうしてなのか、それが、ちょっとした恥のようにも思えるのだ。
それが現代の両親の感覚なのかなぁ。
--オジイチャンは台湾人なのに日本語が読めるんだね。
瑜瑜にそう言われて、ああオジイチャンは昔日本人だったからね、と義父は誇らしそうに言っていた。考えてみれば、あれは昭和天皇が逝去した年の夏である。
--オジイチャンは、新しい天皇陛下が生まれた日のことを覚えているよ。
僕は、生まれてもいない孫なんかよりも、既に存在している自分の娘にこそ幸福であってほしいと願っています。
--明虎、おまえがいれば、爺(パパ)は十分だよ。おまえがいるおかげでどれだけ救われているか……
このセリフが理解できる人生の段階に来てしまった。
イ・スラ『日刊イ・スラ 私たちのあいだの話』
日刊イ・スラ 私たちのあいだの話(イ・スラ、原田里美/宮里綾羽訳、朝日出版社、2021)
今まで「唯一無二」の「唯」は「ある」という意味の「有」だと思っていたが、
漢字は日常的に使っているのかな?
「うん、でも小学生のとき、なんとなくルフィとピカチュウを並べて描いてみたくなったんだよ」
それらは私を描いた絵ではあったけれど、どれも少しずつ描き手自信に似ていた。
胴が長い人は、私の胴を実際よりも長く描き、唇が厚い人は、私の小さな唇を実際よりももっと暑く描いていた。鼻の高い人が描いた私の鼻は実際よりも高く、眉間の狭い人が描いた私の眉間は実際よりも狭かった。
産婦人科の検診代は悪名高い。足を大きく広げて股を丸見えにする構造だから、座るたびに気まずさを感じる。こんな姿勢で対面するのはこの世に一人だけで十分だから、この産婦人科の先生を私の主治医にしよう、と心に決めた。
皮下埋め込み型避妊器具って日本でも合法なのかな。
みんなが少しずつ本音に背を向けた結果、食事は順調だった。正確には、女たちが我慢しているおかげで事なきを得ていた。
日本と同じ。
同じ時代に生まれた多くの女性たちと同様に、私の二人の祖母の名前も「子(ジャ)」で終わる。一九四五年に生まれたヒャンジャさんと、一九四八年に生まれたチョンジャさん。
やっぱり日韓併合と関係ありますかね…。
「日記を毎日お書きになれば、御守りも必要ない星回りです」
私もそれだと信じることにする。
韓国の日常を知りたくて読んだ。
井戸川射子『この世の喜びよ』
この世の喜びよ(井戸川射子、講談社、2022)
このままだと娘たちは、私は初めての子どもだったから臆病に、神経質に育てられてしまった、次女だから、全ての初めてに感動してもらえなかった、と言い続けるに違いない、そんなのはただの順番だけなのに。
私(長女)は違うけど、妹(次女)はよくこう↑言ってる。
「(. . . )私は結婚しない、娘も、弟みたいなのも生まない」
いいと思う、本当に、何でもいいと思う、とあなたは答える。自信を持ってそれが本当だと言いたいがために、結婚や出産をしてきた気さえあなたはする。痛みも出す水も、それはできるだけ少ない方がいいと思う。
うちの母を思い出す話だった。
小倉紀蔵『韓くに文化ノオト 美しきことばと暮らしを知る』
韓くに文化ノオト 美しきことばと暮らしを知る(小倉紀蔵、筑摩書房、2023)
動物の「くま」。韓くにでは「コム」といいます。
「わだつみ」の「わだ」。「海」という意味ですが、韓くにでは「パダ」といいます。
儒教を学ぶ学生たちには、四書を誦じることが要求されていた。その修行のために、山中の書道に三年間籠って勉強する学生たちも多かった。
冗談なのかこれ?
「始まりが半分だ」という韓くにのことばがある。「百里の道は九十九里を以て半ばとす」という日本の諺とは正反対のことばである。
楽天的、というか、自分の能力の可能性を根っこから信じ切っているというか。
わたしの知る某教授は、その学問的業績も業績だが、修能試験で全国二位だったことが学生たちから尊敬される理由のひとつとなっていた。このメンタリティこそ、あきらかに科挙の伝統の国のものである。
(. . . )思わずわたしは一瞬、もう一度日本を捨てて韓国に住もうか、と考えたものだ。
冬沈(トンチミ)ククスを食べた時の文章。おいしい食べ物がある土地は住める。
庖丁は日本製の出刃を使っています。韓国製は何匹か切るともう刃がだめになる。
『オールド台湾食卓記』でも京都で包丁を買っていたな。日本の包丁は優れてるのかな。
明洞は明治町と呼ばれ、本町(いまの忠武路)とともに日本人の商業、遊興の中心地となった。このあたりを中心にしてモダンな文物がソウルに浸透したのであって、これは当時の朝鮮では劇しい逸脱であった。
知らなかった。
「山」は日本語で「yama」、韓くにの古いことばで「mëy」または「moy」。
「os」は韓くにことばで「衣服」、「so」は古い日本語で「衣服」。
行く寺行く寺ほとんどが、豊臣秀吉の軍によって、約四百年も前に焼かれてしまったのだ。
かつてもいまも、韓国は「ハン」の渦巻く社会である。というのは、朝鮮半島は地政学的にいって、外部からの圧迫と攻撃につねにさらされていた地域だし、またその社会の内部も、圧政と差別と暴力によって彩られるしくみになっていたからである。
作者が高校一年生から旧かな、旧漢字を使っているというのに笑う。おもしろい人だなぁ。
オルナ・ドーナト『母親になって後悔してる』
母親になって後悔してる(オルナ・ドーナト、鹿田昌美訳、新潮社、2022)
孤独や退屈を乗り越えたいという願いから、または人生にもっと重要性と意味を与えたくて、母になろうとする女性もいるだろう。
(. . . )想像であれ現実であれ、女性の選択肢が限られている社会であればなおのことだ。(. . . )むしろ、母になることを通じて自分の立場を改善したいという欲求に端を発しているのだ。
彼(フロイト)の研究では、母は他者の機能としてのみ存在する。母子の関係において母自身の経験は常に消されているのだ。母を主体を見なさないことは、母を子どもの感情的発達の中心的で本質的な役割に充てるとともに、子どもの人生の背景にすぎない存在と位置付ける。母は、存在すると同時に存在しないものなのだ。
私の意見では、母であることにはいくつかのメリットがあります。出産後は、圧倒的な幸せを感じます。子どもとの親密な関係、帰属意識、自分への誇り--夢を実現したのです。それは私ではなく他の人の夢ですが、認識することはできます。(ブレンダ)
以前は文章を書いて、彫刻をつくり、絵を描いていました。創造するのが大好きでした。でも、何も残っていません。インスピレーションも活力もまったくないからです。(マヤ)
↑恐ろしすぎる。
女性は、いったん子どもを産むと、多くのことを捨ててしまいます。男性はそうしないのに。(. . . )なりたい姿になることが許されません。それはおかしなことです。母になると、望むことが何もできなくなる。私たちは、そのことと闘うためのシステムをこしらえなければなりません。
母性愛の概念の起源については、(. . . )どうやら、19世紀の間に西洋諸国で、愛の社会的認識に変化が起こったようである。この時期に、母性愛は、この愛の中にイデオロギーのプラットフォームを発見した社会的権威による厳重な監視と分類の対象となったのだ。つまり、母性愛を文化特有のシンボル、意味、慣習に結びつけることによって、母に特定の義務を課す愛の構造を作り出した。母は、子どもを愛さなければならないだけでなく、許容される狭い範囲内で愛情を示さなければならないのである。
ケアの倫理は女性の「本質」に関わるため、母性倫理もそれに従うべきだと考えられがちだ。つまり、母は「自然に」子どもへの多大な献身を感じ、自分のニーズや感情を消し去るほどの域にさえ達すると思われがちなのだ。
女性と胎児をつなぐへその緒は、子宮を遠く離れても存在する母子の絆の象徴である。
(. . . )多くの母は、子どもが幼児期をすぎて何年経っても、子どもを象徴的に養い、意識の中で世話を続けているのである。
母を主体として認めることは、母を役割として規定している社会では当たり前ではない。役割としての母とは、子ども劇の中で演じられるような母だ。この社会的台本によれば、母は主体ではなく客体であり、他者の生活に奉仕するために存在する独立変数なのだ。
母になって後悔する女性がいることを信じない人や、そういった女性に怒りを感じる人が本当に言いたいのは、女性が振り返って母へと移行したことにそれほどの価値がなかったと評価することは、社会にとって危険だということなのだ。
洪愛珠『オールド台湾食卓記 祖母、母、私の行きつけの店』
オールド台湾食卓記 祖母、母、私の行きつけの店(洪愛珠、新井一二三訳、筑摩書房、2022. Hung Ai Chu. 老派少女購物路線 / A Taipei Girl’s Retro Shopping List. 2021)
(. . . )子ども時代の私と弟は、毎日その四角いテーブルで、朝ごはんとおやつを食べた。夏には洛神花茶〔ハイビスカスティー、ローゼルティーとも〕に愛玉〔イチジク科の植物〕ゼリー、白きくらげと蓮の実のデザート。冬には花生湯〔ピーナツ汁粉〕や熱々の米漿〔ライスミルク〕。
玉杓子は十いくつもサイズがあって、一番大きいのは肉圓〔台湾語、澱粉餅で肉餡を包んだ軽食〕をすくうのに使い、一番小さいのは涼圓〔葛団子風のスイーツ〕用だ。
餅菓子や焼き菓子について。お祝いやお供えに使う麵亀〔亀の形に似せた軽いカステラ状の赤い菓子で中に小豆餡が包んである〕や糕潤〔餅米粉にタロイモを混ぜて蒸しあげたもの〕、䶢光餅〔中央に穴が空いた小ぶりな丸パン〕などを買うなら、延平北路の「龍月堂糕餅舗」か「十字軒」がよい。
龍月堂の緑豆糕〔緑豆粉と餅米粉を混ぜ、固めた小菓子〕や塩梅糕〔塩梅の実と餅米粉、砂糖などを混ぜ、固めた小菓子〕などのいわゆるお嬢さん菓子は、大変細かい手作業で作られ、赤い文字を印刷した紙に包まれている。
椪餅は中が空洞の菓子で、底の内側に薄く糖蜜が塗ってあり、杏仁茶や麵茶〔麦こがしの汁粉〕などの甘いお汁粉類にぴったり合う。
祖母と私はいっしょに門前の切仔麵や、米苔目を食べ、お菓子屋の「龍鳳堂」で「麻米粩」〔餅米粉を主材料とするさくさくとした揚げ菓子を麦芽糖と胡麻などでコーティングしたもの〕を買った。
広東人のいう「油器」とは揚げ物一般を指し、なじみのあるところでは、油条〔揚げパン〕、煎堆〔胡麻菓子〕、炸糖環〔車輪型の甘い揚げ菓子〕、牛脷酥〔牛タン型のパイ〕、豆沙角〔小豆餡入り揚げパイ〕などがある。
・喜包
芋棗は作るのが簡単で、誰もが好む味だから、是非作って見るのといいと思う。
ロールキャベツは父方の祖母が作っていた年越し料理の一品で、わが家の食卓に登場して六十年以上になる。(. . . )祖母がこの料理を毎年作ったのは、彼女が日本統治時代に育った娘だったからだ。
ところが日本に留学した弟が、家に電話をかけてきて報告するには、「浅草に行ったら、そこら辺を歩いている背広姿のお年寄りが、みんなおじいちゃんに似ていて、おでんの鍋には、どこでもおばあちゃんが作るのと同じロールキャベツが入っている」と言うのだ。「ここはロールキャベツの故郷で、おじいちゃん、おばあちゃんが登場する映画の舞台みたいな場所だよ」と。
年越し料理は普通の食べ物とは違い、儀式のための食べ物なのだ。まったく手間がかからなかったら、かえってありがたみが薄れてしまうだろう。
私たち子どもには別に好きなおやつを選ばせてくれた。たとえば、筍豆〔味つけ大豆〕、巧果〔胡麻入りの薄くひねった揚げ菓子〕、麻球〔ゴマ団子〕、油炸饊子〔卵と小麦粉で練った生地を毛糸玉状に伸ばして揚げた菓子〕などだ。(. . . )一番印象的だったのは老天禄の桂花條糕だ。餅米で小豆餡を包んだ細長い餅菓子で、金木犀の花になぞらえた美名に負けない口当たりのよさだった。
王宣一著『国宴と家宴』の中に、上海の女性たちが好んで食べた薔薇瓜子の話が出てくるが、ここで売っている。
(劉仲記の)中に一つ華洋折衷の風味がたまらない商品があり、白脱花生糖〔バターピーナツ飴〕と呼ばれている。
台湾は伝統菓子の種類が極めて豊富なのに、なぜだかパイナップルケーキだけが注目されて、民間外交の道具になっている。その理由を考えてみるに、伝統菓子によく使われる小豆餡や緑豆餡が、豆類は塩味のおかずとして食べる習慣の西洋人の口に合いにくいのではなかろうか。
台湾伝統菓子の世界に、見た目が華やかなものはたくさんある。緑豆糕にしても婚礼用の大餅〔大きな焼き菓子〕にしても、木製の型で抜き、寿や双喜〔喜の字を横に二つ並べ、結婚の祝いに用いる〕の文字、あるいは花鳥虫魚などの模様を浮き上がらせる。緑豆椪のように、バターパイ風の生地を用いたものは、上に赤い色で文字を書いたり、点を打ったりする。
十八世紀から今日まで、数十万もの中国移民が、広東省東部の潮州や汕頭からここ(タイ)にやってきた。一つひとつの建物に黒と赤で塗られた横額が懸けられ、金の文字は中国語とタイ語の両方で書いてある。読んでみると、意味は通じるけれども、言葉遣いは清朝時代のものだ。
あちらこちらの茶室で耳をそば立てて、気がついたことは、年配の男性たちが、たいていは昔語りをしているのに、女性たちは多くの場合、目の前の現実について話し合っているということだ。
近藤弥生子『台湾はおばちゃんで回ってる?!』
台湾はおばちゃんで回ってる?!(近藤弥生子、大和書房、2022)
最近、台湾が気になる。
台湾の朝食文化
- 定番の豆乳と蛋餅(ネギを加えたクレープ状の生地に卵など好きな具材を挟み、お好みでソースをつけていただく)
- 飯糰(台湾式おにぎり)
- 乾麵(スープなし麺)
- 肉羹(肉つみれのとろみスープ)
おいしそう🤤
「産後ケアをしっかりやれば、更年期が楽になる」
産後に備えて準備しよう。
台湾の公教育はまだ成長過程といえるし、正直日本の方がいいなと思う点も多い。
台湾のジェンダー平等を大きく前進させる分岐点となったのは、2005 年に憲法の改正で「クオータ制」が導入され、比例区の議員当選者の男女比を同数とすることが定められたことだ。
クオータ制ってやっぱり重要なんだなぁ!と思って読み進めると…
その背景には、女性運動の象徴・彭婉如さんの存在がある。当時 10 分の 1 だった女性枠を 4 分の 1 に広げようと奮闘した彭さんは、1996 年に失踪し、惨殺遺体で見つかった。
怖すぎる…
その他、メモ